想像してみてください。町の道で、鬼の顔をした人たちが子どもを追いかけています。
手には竹の道具と棒を持っています。子どもは大泣きです。
でも、親は止めません。「うちの子もたたいてください!」と、鬼のまわりに集まります。
これは、日本の広島県にある尾道(おのみち)市で、本当に行われているお祭りです。名前は「ベッチャー祭り」といいます。
引用元:https://youtu.be/nAFGcyIAd6c?t=23
ベッチャー祭りは、尾道の秋のお祭りです。
2026年は11月1日から3日までの3日間でした。
今年はもう終わっています。
昨年は約8万人が来ました。料金は無料です。
会場は、一宮(いちのみや)神社と尾道の町なかです。
JR尾道駅から歩いて約10分です。
一宮神社の正式な名前は吉備津彦(きびつひこ)神社です。
小さな神社で、隣のお寺の敷地の一角にあります。
日本では、ベッチャー祭りは「西日本有数の奇祭(きさい)」と紹介されています。
奇祭とは、珍しくて変わったお祭りのことです。
このお祭りには、三人の鬼が出てきます。
名前は「ベタ」「ソバ」「ショーキー」です。それぞれ、武悪(ぶあく)という面、大蛇(おろち)の面、天狗(てんぐ)の面をつけています。
鬼の姿をしているのは、その土地の氏子(うじこ)です。氏子とは、神社のまわりに住む人たちのことで、お祭りの担い手です。
鬼たちは、神輿(みこし)の前を歩きます。神輿とは、神様の乗り物のことです。
人が担いで町を回ります。行列の先頭には獅子頭(ししがしら)もいます。
これは獅子の頭の形をしたもので、道を清める役目があります。
ここがいちばんおもしろいところです。
海外にも、怖い存在が子どもに会いに来る行事があります。
たとえば、アルプス地方に伝わる「クランプス」です。
クランプスは悪魔のような姿をしています。
聖ニコラウスが、良い子にプレゼントをあげます。
そのとき、クランプスは悪い子を枝や棒でたたきます。
食べる、地獄に連れて行く、という話もあります。
オーストリアでは、親がしつけのために、クランプスを家に呼ぶこともあるそうです。
12月5日の夜は「クランプスナハト」と呼ばれます。
聖ニコラウスの祝日の前の夜です。
つまり、クランプスは「罰」を与える存在です。
12世紀には、カトリック教会が、悪魔に似ているという理由で、この祝祭をやめさせようとしました。
では、日本の鬼はどうでしょうか。
ベッチャー祭りの鬼も、たしかに怖い顔をしています。
でも、役目はちがいます。鬼は、悪い気や病気を追い払います。
鬼の棒や竹でたたかれると、1年間、病気をしないで元気に過ごせるといわれています。
これを「無病息災(むびょうそくさい)」といいます。
まとめると、こうなります。
同じように子どもをたたいても、気持ちは反対なのです。
理由は、お祭りの始まりにあるようです。
英語の解説によると、1808年に尾道で疫病(えきびょう)が広がりました。
疫病とは、たくさんの人がかかる病気のことです。
そこで、領主が地元の神社に、病気をはらう祈りを命じました。
祈りは3日2晩続きました。そのとき、神輿の先頭に、獅子と三体の鬼が立ちました。
これが今のお祭りにつながっている、と説明されています。
日本語の旅行口コミにも、江戸時代に病気が治るよう願った祈りが始まりだ、と書かれています。
ただし、この始まりは、英語の解説で見つけた話です。
尾道市などの公式な説明では、確認できていません。
「たたく」にも意味があります。
昔は、子どもの体から病気を「たたき出す」と信じられていたそうです。
たとえば、子どもが病院で注射を打たれるとき、泣くことがありますよね。
それでも親は、子どもの健康のために、病院へ連れて行きます。
ベッチャー祭りの親も、同じ気持ちなのでしょう。
子どもは泣いても、1年間元気でいてほしい。そう願って、鬼のところへ連れて行くのです。
尾道は、昔から海を使った交通で栄えた港町です。
町には古いお寺や街並みが残っています。
そこでは、太鼓おどりや天神祭などのお祭りも行われています。
ベッチャー祭りは、毎年11月1日から3日に行われています。
11月3日は毎年必ず祝日(会社や学校が休みの日)です。
2025年の予定表では、次のような流れでした。2026年の時刻は確認できていません。
3日目は、町の通りで鬼に会えます。
ショーキーは、竹を細かく割ったササラで、まわりの人の頭を軽くたたいて歩きます。
ササラは、英語では「bamboo whisk」と紹介されています。
ベタとソバは、祝棒(いわいぼう)という棒を持っています。
観光案内所のサイトによると、ご利益にもちがいがあります。
ショーキーのササラでたたかれると、賢くなります。
ベタやソバの棒で突かれると、子宝(こだから)に恵まれます。
子宝とは、子どもを授かることです。
尾道駅の近くには、「尾道らーめん ベッチャー」というラーメン店もあります。
この店の麺は、一宮神社で厄除けの祈りをしているそうです。
来年行きたい人は、出かける前に日程を調べてくださいね。
あなたの国には、怖い姿をした存在が出てくる行事はありますか?
その存在は、罰を与えますか?
それとも、人を守りますか?ぜひ教えてください。
参考
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