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星を継ぐもの

1.星を継ぐもの

月面基地を建設し、木星の衛星ガニメデまでは科学調査団を派遣して長期に調査活動ができるくらいに科学技術が発達した人類の話。
死亡推定時期が5万年前という死体が月面で発見されるという謎が人類に突き付けられた。
国連宇宙軍を後ろ盾に原子物理学者のハントと生物学者のダンチェッカーの二人を中心として、謎が次々に解明されていく。舞台は、地球、月そして木星の衛星ガニメデ。

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作者のジェイズ・P・ホーガンがこの作品を発表したのは1978年4月です。文庫本(創元SF文庫)の36ページに、「DECのミニコンピュータ」「IBMの大型コンピュータ」の名前が出てきてにんまりしてしまいました。

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ジェイズ・P・ホーガンの経歴「いくつかの企業で設計技術者として働き、1960年代には販売部門に移り、ハネウェルのセールスエンジニアとしてヨーロッパ中を渡り歩いた。1970年代にはDECに転職して Laboratory Data Processing Group で働くようになり、1977年にはマサチューセッツ州ボストンに移住し、DECのセールス訓練プログラムの運営を担当した。1977年、仕事の傍ら書き上げたハードSF『星を継ぐもの』(Inherit the Stars)でデビュー。1979年、DECを辞めて作家専業となり、フロリダ州オーランドに移住した。(Wikipedia「ジェイムズ・P・ホーガン」から抜粋)」を読んでいたからです。

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IBMは現在(2022年1月)も健在です。DECは馴染みが薄いかも。ディジタル・イクイップメント・コーポレーション (Digital Equipment Corporation)のことで「かつてアメリカ合衆国を代表したコンピュータ企業の一つ。1957年、ケン・オルセンによってマサチューセッツ州メイナードに設立された。通称 DEC(デック)。欧米では Digitalと略記されることも多い。そのPDPシリーズとVAXシリーズは1970年代と1980年代の科学技術分野において、最も一般的なミニコンピュータだった。1957年から1992年まで、本社はマサチューセッツ州メイナードにあるかつてのウール工場だった Clock Tower Place に置かれていた。1998年にコンパックに買収された。そのコンパックは、2001年にヒューレット・パッカード (HP) に買収されていることから、現在、DECの製品群はHPの名前で販売され続けている。かつてのDECの一部事業(特にコンパイラ関連)やマサチューセッツ州ハドソンの工場はインテルに売却されている。(Wikipedia「ディジタル・イクイップメント・コーポレーションから抜粋)」なのです。

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学んだ大学の研究室にはDECのミニコンピュータPDP11がありました。PDP11とはDECが1970年代から1980年代に販売した16ビットミニコンピュータシリーズのことです。
ちなみにPDPとはProgrammable Data Processorのことです。コンピュータではなく「プログラム可能なデータ処理装置」という命名なんだ~と思いました。

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2.ガニメデの優しい巨人

「星を継ぐもの」の続編です。
2千500万年にガニメデで遭難した異星人(人類よりも大きな体躯を有し、ガニメデに因んでガニメアンと呼称)の宇宙船を調査していたハントたちの目の前に、ガニメアンの宇宙船が突如として出現した。彼らは故郷を2千500万年前に旅立ち、長い旅の果てにようやく故郷に戻ってきた。だが故郷は消失していたのだった。
ガニメアンは重力工学が発達した科学文明をもっていた。ブラックホールを自由に操り、宇宙船の動力源として、また重力波を通信に用いていた。

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重力工学で連想するのは、逆重力機関を提唱した一連の書物です。著者は、アダムスキー型UFOの構造を解析して超相対性理論を提唱し、「空飛ぶ円盤製作法(大陸書房)」などの本を書いています。

今となってはトンデモ本なのでしょうが、当時は逆重力機関により惑星間の航行は飛躍的に発展し、また重力直接発電によって安全かつ半永久的にエネルギーが得られる21世紀が訪れると信じていました。
ばら色のはずだった21世紀は、9.11で最悪の幕開けとなりました。鉄腕アトムは誕生せず、核融合発電も実現せず、逆重力機関も行方不明です。

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さて、ガニメアンが2千500万年の過去からやって来たにもかかわらず宇宙船内では20数年の時間しか経っていないのは、制御不能のまま全速力で亜空間航行を継続せざるを得なかったからで、まさに相対論的効果の影響をもろに受けたと考えることができます。

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人類に知られている力は4つで、電磁力、強い力、弱い力、重力です。この4つのなかで重力が他の3つに比べて桁外れに弱いのです。この力を自在に扱えるような時代がくるまで、あと何年?

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3.巨人たちの星

「ガニメデの優しい巨人」の続編です。
ガニメアンたちは地球でのひとときの休息の後、伝説のジャイスター、2千500万年前にガニメアンたちの子孫が移住したとする系外惑星を目指した。ガニメアンの宇宙船が悪空間航行に移行し外部との通信が遮断して間もなくジャイスターから「貴方がたの帰還を待っている」とのメッセージが地球に届いた。

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ガニメアンの子孫でありジャイスターの住人たるイージアンの世界は現代のインターネット世界を彷彿とさせるものです。ただし、インターネットが特定のコンピュータのコントロール下にない世界なのに対してイージアンの世界はヴィザーという特定のコンピュータ?AI?と端末のネットワークが織りなす世界です。ヴィザーの世界は究極の善意の世界なので、セキュリティは甘々です。セキュリティ甘々なヴィザーのネットワークは、悪意のあるネットワークに騙されていました。AIがAIを騙す世界。ヤバいですね~、怖いですね~。

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そんな世界に舞い戻ってきたガニメアンは順応していけるのでしょうか。いやいや、ハントもダンチェッカーも順応してしまっていました。ジャイスターでガニメアンを出迎えた彼らはどうやって亜空間航行の先回りをしたのでしょうか。

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一連の謎解きと事件の後、ガニメアンはジャイスターで存在の意義を見つけます。ヨカッタよかった。

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