MENU

客観性の落とし穴

帯に書かれていた「この考えのどこが問題なのか?『それって個人の考えですよね』」に惹かれて買ってしまった。

他にも「数字で示してもらえますか」「エビデンスはあるんですか」「その考えは客観的なものですか」。これらの言葉は相手を黙らせる最強の言葉なのですが、その中でも最も破壊力があるのが「それって個人の考えですよね」なのだ。

 

けれど、この世の中に「数字」はなく、「エビデンス」もなく、まして「客観的」なものなど、無いのです。すべて「個人の考え」に基づいて集めた具体的な事象を「個人の考え」に沿って「数値化」していったものです。「考え方」が異なれば集める具体的事象も違ってきますし、数値化する閾値も異なってきます。一見「数字」は客観性の塊に見えますが、その数字に至る過程で個人の考えが色濃く反映しているのです。

 

ですが、我々は4つの言葉には抗(あらが)い難い。それは、自分自身が相手に対して優位に立とうとするときに魔力を発揮する言葉だからです。

 

とにかく、この言葉の呪縛に対抗できる手段を提供しているのが本書であると思い込んで買ってしまったのでした。確かに対抗する手段は示されてはいましたが、それは4つの言葉と同じ土俵上での対抗手段ではなかったのです。

 

「それって個人の考えですよね」をぎゃふんと言わせる強烈な言葉が提供されることを期待していましたが、それはなかった。客観性を生み出すと信じられている「大数」と「統計」と「平均」の斜め上をいく「具体的事象をひとつひとつ拾い上げること」だったのです。

 

これは、「最大多数の最大幸福」と「少数意見の尊重」の関係にあるように、互いに補完し合うことで完成度の高い世界を目指せるような関係に似ていると言える、と思うのです。

いい意味で?期待を裏切った本なのか?

 

 

同じカテゴリー「読書のおと」の一覧

客観性の落とし穴

帯に書かれていた「この考えのどこが問題なのか?『それって個人の考えですよね』」に惹かれて買ってしまった。

記事の続きを読む

ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律

教養悪口作家の堀元見氏の2冊目の著書です。この1冊を読めばビジネス書を100冊買わなくてもよくなる優れものです。私はビジネス書の類は、あのナポレオン・ヒル氏の「思考は現実化する」さえも読んだことがなかったので、お得感半端ないです。

記事の続きを読む

教養悪口本

教養悪口作家の堀元見氏によるディスって教養を身に付ける本です。 この中の一番のお気に入りは「ネルソン提督のようですね」。悪口には聞こえませんね~。むしろ誉め言葉のようですが。

記事の続きを読む

星を継ぐもの

月面基地を建設し、木星の衛星ガニメデまでは科学調査団を派遣して長期に調査活動ができるくらいに科学技術が発達した人類の話。 死亡推定時期が5万年前という死体が月面で発見されるという謎が人類に突き付けられた。 国連宇宙軍を後ろ盾に原子物理学者のハントと生物学者のダンチェッカーの二人を中心として、謎が次々に解明されていく。舞台は、地球、月そして木星の衛星ガニメデ。

記事の続きを読む

クリスマス・キャロル

素直に感動したいのなら、四の五の言わずに読んでください。クリスマスという1年のうちのたった1日しか奇跡が起きないのなら、それは偶然です。その日から毎日奇跡が起こるなら、それは奇跡です。

記事の続きを読む

人気記事ランキング

  • 「最も成功した失敗」:アポロ13号

    アポロ13号は本来の任務は達成できなかったので失敗です。しかし、宇宙飛行士の生命の危機を克服して、月の周回軌道から無事に地球に帰還させたあらゆる行動は、人類の至宝としていつまでも語り継いでいかなくてはならないものだと思います。

    記事の続きを読む

Copyright© 2024 花鳥風月の巻~普段の生活のなかの宝物を見つける~

ページトップ