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教養悪口本

教養悪口作家の堀元見氏によるディスって教養を身に付ける本です。
この中の一番のお気に入りは「ネルソン提督のようですね」。悪口には聞こえませんね~。むしろ誉め言葉のようですが。

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どんな時に使うのでしょうか。「大事なプレゼンの直前に精神論を語ってきて準備の時間を奪う上司」という例文が載せられていました。

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ネルソン提督はトラガルファー海戦で大勝利を収め、イギリスが大英帝国への道を突き進む切欠を与えた英雄です。なぜ悪口になるのでしょうか。

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それは日露戦争の日本海海戦における東郷平八郎を見ると分かります。
東郷はいよいよ決戦というときに、旗艦三笠のマストにZ旗を掲げ「皇国の興廃この一戦にあり各員奮励努力せよ」と鼓舞したのです。

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これはネルソン提督が開戦直前に掲げた「英国は各員が義務を果たすことを期待する」に倣ったものです。明治の日本海軍は英国海軍をお手本として創設されました。若き海軍士官たちは英国に留学し、英国海軍を徹底的に学びました。当然トラガルファー海戦とネルソン提督のことは学んでいるはずです。日本海海戦における東郷の行動は、トラガルファー海戦におけるネルソン提督の行動そのものです。それほど尊敬していたのでしょう。ただひとつを除いて。
それは、東郷はZ旗のみを掲げたことです。

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「英国は各員が義務を果たすことを期待する」に対応するには31の旗が次から次への掲げられなければならないのですが、敵艦が迫っている中でそれを解読していかなければならない部下の状況を想像すると「やってられね~」という気持ちにもなります。
大事な時間を潰すし、やる気も潰す、勝手に粋がって、勝手に死んでしまった上司に恨み節も言いたくなります。
だから東郷はZ旗を掲げたのでしょう。真似るだけではなくさらに進んで学んでいます。

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「国際信号旗はアルファベット文字旗(26種)、数字旗(10種)、代表旗(3種)、回答旗(1種)の計40種。この中でZ旗はアルファベットの"Z"の文字を示す信号として用いられる他、単独で「私は引き船が欲しい」、漁場では「私は投網中である」の意を示す信号としても用いる(Wikipedia「Z旗」から抜粋)」というように、本来はZ旗には「皇国の・・・」の意味はないのです。
日本海海戦では、信号旗としてZ旗にこの言葉を割り当てただけでZ旗自体に特別な意味はなかったということです。
「アルファベット最後の文字でもう後がない=決死の覚悟」を連想させるように仕組んだのかもしれません。

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もうひとつ東郷がネルソン提督に倣わなかったことがありました。
ネルソン提督は海戦中に戦死しましたが、東郷は生きて戦勝を勝ち取りました。

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